ジョークとジョーク

ことばのリハビリですよ。

曖昧な引力

「自分たちが付き合うことで今までと何が変わってくると思う?」僕が改めて想いを告げた相手は逆にそう問い返してきた。それは今まで自分が過去から何度となく繰り返し考えてきた疑問であり、答えを見つけることのできていない疑問でもある。たしかに一体何が変わるのだろう。今だってたまに他愛のない連絡を取り合って、都合が合えば会って遊んで、じゃれあうことだってある。現在のその関係と恋人との違いは果たしてなんなのか。その間には何か隔たりがあるような気がするのだけれど、実態が未だにつかめない。結局その時も数秒で最適解を見つけ出すことができるはずもなく「何が変わるか分からないけど、仮に今そっちに彼氏ができたとしたら僕は悲しむと思うから付き合いたい」という的外れなことを口走ってしまった。現代文テストなら配点20点中0点。質問の意味を明確に捉えましょう。


「友達だとか親友だとか恋人だとか、人との関係性はラベルの貼れるものばかりじゃない。もっとアナログで名前のないものもあると思う」最終的に相手はゆっくりと時間をかけてYES/NOではない答えを出した。よくある「良いお友達でいましょう」という断り文句ともまた違う回答保留。保留とは言ってもこの先YESに変わる可能性はとても低いんだろうなとはなんとなく感じた。当初考えていたような関係には至らなかったけれども、これもまぁ自分たちの間の一つの答えの形なのかもしれない。ベストではなくベター。僕が言葉を探す代わりに吐き出した電子タバコの煙は、車窓の外からの涼風にさらわれてすぐに消えた。外は先日の台風が嘘のような高い青空。ようやく僕の夏が終わったような気がした。